クリスマスの贈り物~乳香と没薬の物語~
今年もあっという間にクリスマスシーズンがやってきました。綺麗なイルミネーションに、かわいいコフレにときめくシーズンです♡しかし、今回は少し趣向を変えて、クリスマスにまつわる昔々の香りのお話をしたいと思います。アロマテラピーに親しんでいる方には馴染み深い、乳香(フランキンセンス)と没薬(ミルラ)ですが、実はイエス・キリストの時代にも重宝された香料でした。現代にも受け継がれる素敵な香りの世界をご紹介します。
2022年11月25日更新
記事の目次
[1]乳香と没薬ってなに?
乳香ってなに?
乳香は「にゅうこう」と読み、カンラン科の樹木から採取される香料です。香料は樹液を固めたもので、その名のとおり乳白色をしているのが特徴です。
古くから神に捧げる香りとして重宝され、その歴史は古代エジプト時代まで遡ると言われています。
アロマテラピーでは、この固まった樹液を蒸留して精油を採取し、フランキンセンスの名で流通しています。
没薬ってなに?
没薬は「もつやく」と読み、こちらもカンラン科の樹木から採取される香料です。乳香と同じく樹液が香料として使われており、その歴史はやはり古代エジプト時代にまで遡ります。
また、古代エジプトといえばミイラですが、没薬はミイラ作りの防腐剤としても重宝されていたそうです。
アロマテラピーではミルラの名で流通しており、一説によるとエジプトのミイラの語源は、このミルラに由来するともいわれています。
不思議と落ち着く優しい香り
乳香と没薬は火にくべると白い煙を出しながら香りを放ちます。その香りはスパイシーでレジンのような香り。
初めて香りを嗅いだ人は「え?これがいい香りなの?」と感じる方もいるかもしれません。
日常的に馴染みがない香りを放つのですが、どこかお香のようなスモーキーな香りもするので、不思議と心が穏やかになってきます。
古くから、乳香の香りは呼吸器系のトラブルに、没薬の香りは消化器系のトラブルに使われてきたそうです。
どちらも精神が不安定な時に乱れやすい器官なので、香りを嗅ぐことで心を落ち着かせて身体を癒していたのかもしれません。
[2]乳香と没薬はクリスマスの香り
クリスマスはキリスト教の祭典。イエス・キリストの誕生を祝う、1年で最も大切な祭事です。
現代では、キリスト教徒以外もイルミネーションを楽しんだり、大切な人と贈り物を交換したり、友人たちとパーティをしたり、とても身近なイベントとなっていますよね。
そんなクリスマスですが、乳香と没薬はクリスマスを象徴する香りとも言われています。
イエス・キリストへの贈り物
2000年前、ユダヤのベツレヘムでイエス・キリストが誕生しました。その時、東方の三博士と呼ばれる占星術の学者たちが、贈り物を持ってイエスのもとへやってきました。
星に導かれてやってきた学者たちがもってきた贈り物こそが、黄金、乳香、没薬でした。
この時代、乳香と没薬が黄金と同等の価値があったことがうかがい知れます。
乳香は祈りの象徴。イエスが神から命を授かったこと、そしてイエス自身が神であることを表しています。
そして、没薬は死の象徴。イエスが世界の罪を負い「神の子」として死ぬためにこの世に生まれ、そしてやがて復活することを表すものとされています。
キリスト教では今も欠かせない香り
教会でのミサの際、現代でも乳香を焚く習慣があります。その焚き方も独特で、振り香炉と呼ばれる香炉を使用します。
最も有名なものは、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の巨大振り香炉「ボタフメイロ」。
乳香がくべられた大きな香炉が白い煙を立ち登らせながら、振り子のように天井近くまで左右に振り上げられる様は圧巻です。
祈りの象徴として、教会いっぱいに乳香の香りを拡げています。
[3]実際に焚いてみよう!
古代エジプトやイエス・キリストの時代には、庶民が手を出せる価格ではなかった乳香と没薬ですが、現代では手頃な価格で販売されており、私たちも気軽に香りを楽しむことができます。
実際に焚いて、その香りを体感してみてください。
〈用意するもの〉
・香炭(こうたん)
・香炉または耐熱性のお皿
・ピンセット〈手順〉
1、香炭と呼ばれる小さな炭に火をつけます
乳香と没薬が溶けて火を消してしまうことがあるので、しっかり炭に火を入れます
2、香炉に香炭を置き、香炭の上か近くに乳香・没薬を置く
ピンセットを使うとやけどの心配がありません
3、30秒ほどで煙が出て香りを楽しむことができます
ディナーのあとのほっこりタイムに、温かいお茶やクッキーと共に香りを楽しんで♡
[4]昔々の聖なる夜に思いを馳せて
いかがでしたか。普段何気なく使っている香りが2000年以上も前から使われているなんて素敵ですよね。
今年のクリスマスはおうちで過ごす方も多いと思うので、乳香と没薬の香りで一味違った夜を過ごしてみてはいかがでしょうか。
香りがどんなものよりも貴重だった時代に思いを馳せながら過ごすクリスマスも今年ならでは♡
きっとどんな贈り物よりも心ときめく時間を過ごすことができると思いますよ♪